
オンボロバスに乗ってカンチャナブリーという田舎街を目指す。バスの扉は前も後ろも全開、おまけに窓も全開、バスは車体を軋ませながら見かけからは思いもよらない速度で進むんだ。容赦なく顔に吹き付ける熱風を道連れに3時間、着くころには鼻の穴も頭も砂だらけだね、きっと。でも僕は笑っている。このバス、なんだかすっごい楽しいよ。そうさ、旅をしてるんだって。ふととなりを見ると、野菜売りのおばちゃんは強風と大揺れの中あぐらかいてウトウトしてる。おばちゃん優勝だねってつぶやいたらこっちを向いてウンウンって。僕もだんだんボーっとしてきて荒井良二さんの『バスに乗って』を思い出す。泊まるところどうしようかなんてさっきまでの心配がいつのまにか消えちゃったよ。